2015年 04月 21日
小・中・高すべて。 集合写真を眺めて懐かしむことも 好きだった子を見つめることもできない。 学生時代最後の夏、 はじめての彼女で、僕にものすごい愛情を注いでくれた。 どこにでもついてくる。 僕は懐いてくれるのが嬉しくて、 これが恋愛だと思い、充足していた。 やがて就職が決まり、 その頃から彼女は僕に不満をぶつけるようになった。 「冷たい」「言動に愛がない」「自分勝手」 些細なことでケンカをすることが増えた。 一方的に彼女があらぶった。 これが痛い。火傷のような跡が残る。 痛みに耐えきれず彼女を押さえ込み、暴れる腕を掴み、説得する。 やがて疲れてしおらしくなる彼女が愛しくなり、抱きしめて、 そんなねじれた週末デートが1年以上続いた。 ある日、僕の卒業アルバムを見ていた彼女が表情を曇らせた。 「この人はなに?」部活の集合写真。 僕の隣で体育座りしている女の子を指さしている。 「なんで隣にうつってるの?」 「なんでって・・・別に意味はないよ」 「うそついてる」 彼女は顔をアルバムに近づけて、執拗に写真を目で擦る。 修学旅行、文化祭、体育祭。 僕の隣に女の子がいるのを見つけると低く唸った。 「なんでこの人隣にいるの?」 何も関係もないことを訴えても、彼女は聞き入れず、 次の日、彼女をアパートに残して職場に向かった。 帰ったら、彼女を車で地元まで送り届けなくてはならない。 仕事が終わり、アパートに帰宅。 玄関に彼女の靴がない。 買い物にでかけたのだろうか。 部屋に電気を灯す。 リビングに、細切れに切り刻まれた紙切れが大量に散乱していた。 制服姿の少年少女、校庭、校舎、 桜の花びらのように、床に散り積もっている。 卒業アルバムだった。 小・中・高のアルバムすべて、固い外装を残して、 昨日の彼女を思い出して僕は深くため息をつく。 唸るような空冷ファンの羽音。 Word が立ち上がっている。 『さようなら』 スーツ、ジーンズ、シャツ、多くの衣服が切り刻まれていることも発見した。 僕はとうとう戦慄した。 作業服を失うのは本当に困る。職場に言い訳の仕様がない・・・ 押し入れを開ける。作業服は元のまま仕舞われている。 「よかった・・」胸を撫で下ろす。 そのとき、押し入れの天袋から微かな物音がした。 気のせいではない。人為的な音。 押し入れをよじ登り、天袋の襖を開き、のぞき込む。 黒い影。暗闇の中、目だけがこっちを見ている。 まるで大きい猫。 彼女だった。 降りてきた彼女は悪びれた様子もなく言った。 「さっきよかった、って言ったよね」 たしかに作業服の無事に安堵して、そうつぶやいた。 「私と別れられてよかったってことでしょ!!!」 「???」 「パソコン見てそう言ったよね、やっぱりそうだったんだ」 「いや、作業服が無事だったから・・・」 「私のことは遊びだったって事がよくわかった」 展開が異次元すぎて僕にはもうついていくことができない。 とにかく彼女はキレて爪で僕の頬をえぐった。 頬に見事な3本の縦線が刻まれた。 その後の事はよく覚えていない。 「飼い猫にひっかかれたんです」 頬の傷について答えた僕の言い訳は今でも職場の語り草となってい
by harurei
| 2015-04-21 00:34
| 小説
|
Comments(7)
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kj_junk at 2015-04-21 00:53
背筋がゾクゾクしました…
これは…フィクションでは、ないのですかね…?
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lily1406 at 2015-04-21 01:00
haruさん これは実話?小説?
haruさんの実話だと思って読んでたから凄く怖かったww 特に天袋のとこ!(>_<)キャー 夜中に読んだから余計に怖い☆ 今度からharuさんのブログは昼間に読も~っと☆
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pote-sala at 2015-04-21 06:55
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chocoyan2 at 2015-04-21 08:34
うんうん、猫の話だよね(>.<)
猫の嫉妬は怖いφ(>.<)メモメモ
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hello-dolly-3 at 2015-04-21 17:02
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nahoneige at 2015-04-21 22:21
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haneymoon at 2015-04-21 22:26
すごいdeepな恋愛ですね。
愛されすぎちゃったのかな haruさん。 ノンフィクション ⁇ なら・・ でも、怖いし重すぎですね。 私には耐えられないなぁ〜 って思った。 haruさんは、優しいですね。。 そして・・ きっと人は、人を ホドホドに愛せないから 傷つけ合ってしまうのかも。。 って・・・ ただ、 ここまで執着してしまうと 辛いですよね〜 お互いに。。 そして、 天袋の大きな猫 ⁈ は やっぱり ・・・怖い。( ̄O ̄;) |
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