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2018年 10月 16日

赤岳3


道迷い、転倒、滑落
嵐、雷、熊遭遇。

登山ではあらゆるリスクを想定する必要がある。

ソロではそれなりに意識して望むけれど
グループで行動しているとき、仲間に災難が起きたら何ができるのか。
そんな命題を突き付けられた一日となった。


赤岳山頂を堪能した僕たちは、意気揚々と下りはじめた。
行者小屋を経て赤岳山荘へ戻る。
余裕のあるルートとはいえ、先日の雨を抜け、今日の難所を超えてきた。
ほとんどのメンバーが1年ぶりの登山。
「膝にきた」「足の裏ヤバい」「爪先が痛い」
やがてそれぞれ問題を抱えはじめた。

一方、定期的に登っている僕はいたって快調。
極力衝撃を伝えないように、段差を避ける工夫をして
負担がかからないよう意識して歩いていた。

「あっ」

前方で1人が揺り籠のように転倒するのが見えた。H君だ。
雨の影響で滑りやすく、皆一様に転んでいたから
またかと笑って声を掛ける「大丈夫~?」

H君は滑った体勢のまま動かない。左腕を押さえて固まっていた。
呼びかけに反応がない。僕たちは表情を変えて様子を見守る。
ゆっくり、自分の感覚を確かめるように半身を起こすH君。
腕を気にしている。滑ったときに手を突いたようだ。
「歩ける?」「あぁ、何ともないよ」「手動く?」「ほら」
小気味よく動く指を見て僕は胸をなでおろした。
一時的な痛みだったのだろう。彼は立ち上がり、再び歩き始めた。

下山後、温泉に入り、焼き肉を食べる―

皆そのことだけを考えて黙々と歩いていた。
下まであと1時間くらいだろう。
そのとき、またH君が滑った。ザックから崩れ落ちて
ひっくり返った亀のようになっている。
慌ててみんなで肩を貸そうとしたけれど、立ち上がる意志を見せない。

片腕が動かないと言う。

先程手を突いた衝撃で、腕全体に影響が及んだのだろうか。
腕が動かないって・・・只事ではない。
こんなときどうしたらいいだろう。応急処置もわからない。
温泉と焼き肉は一気に消し飛んだ。
幸い彼の表情は深刻ではない。
心配かけないように気を張っているのかしれないが、大丈夫だと笑っている。
腕以外は問題ないらしい。それなら腕の負担さえ取り除けば・・・

「僕がH君のザックを担いで行こう」

山のドラマで、ガイドさんが顧客のザックを前に抱えて運ぶのを見た。
その要領で持っていける気がする。体力もまだ余裕がある。

ザックを譲りうけて体の前に掛ける。意外と持ちやすい。
ただザックの雨蓋が自分の顔半分くらいを覆うので前が見えない。
体を斜めに傾けながら、K君に誘導してもらって降りていく。
他の2人はH君が転ばないように両脇をサポート。
一気に体力が削られていく。ほんと余力を残しておいてよかった。

そうして、何とか車を停めている赤岳山荘へ辿り着いた。よかった。
1人だったら難しい状況でも、グループなら周りでフォローできる。
ソロ派だけど、グループ登山の良さを実感した。

「だんだん腕が上がるようになってきた」とH君。
「温泉に入ったら完治するんじゃない?」
安心した僕たちは、予定通り温泉&焼き肉へ向かった。


下山から数日後―
H君から山メンバーへLINEが届いた。

「今日やっと医者行けたんだけど、骨折ですねって、まさかの人生初骨折。
まぁ上腕の端っこの方が少し外れている程度なんだけどね」

折れていた・・・



by harurei | 2018-10-16 01:23 | 山&キャンプ | Comments(2)
Commented by R-GreenLife at 2018-11-02 09:55
いや〜
晴れて山頂の眺めを堪能し、下山後には温泉と焼肉♡最高かw
と思ったら、あらら〜骨折してましたか・・・
まだ足でなくて良かった。
私も負傷せず山を下りたことがないくらいなので、人ごとではないです。
幸い小さな怪我で済んでますが、登山パンツのお尻に小さな穴が空いているのは、ここだけの秘密w
今日の夜中からまた山行ってきます!
いつ何が起こるかわからない山、心して行ってまいります!
Commented by harurei at 2018-11-02 22:03
>るみさ
自分も何度も転んで、何度も足を捻ってる・・・
当たりどころ、角度によっては骨折につながるから、ほんと他人事ではないさね。
そそ大怪我に比べたら、登山パンツの穴くらい大したことなーい!(多分・・)
おぉ、今度はどこだろう、写真楽しみ!
週末天候は良さそうだし、心して楽しんできてね(^O^)
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